青春のイーストエンド

CULT FLOWERSボーカリスト小川敦也のレコード日記

2009年03月

時間は流れてるんだ。
時代は変わる。
札幌にある大好きなお店、本物のMODSショップ「STOMP」が今月いっぱいで閉店する。
本当に大好きなお店だったんだよ。

札幌にいる頃はたくさんの服をSTOMPで買った。
コートとか、ジャケットとか、シャツとか、帽子とか、Tシャツとか、雑貨とか。
そしてそれ以上に、お金じゃ買えない知識やセンスを
僕はお店を訪れるたびに、その雰囲気やディスプレイされている商品から
人知れず盗んでいたんだよ。

オーナーの神原さんはすごく優しい人。
俺なんか神原さんからしたらまるでインチキみたいなもんでさ、
音楽だって俺なんかより100倍詳しいし造詣が深い。
なのに、お店に行くと俺の音楽話を30分だって聞いてくれるんだよ。
DJも何度か同じイベントで一緒にやらせてもらったけど、もうレベルが違いすぎるんだ。
神原さんが回すだけで、それだけでその曲に魔法がかかる。
それだけで曲がカッコ良くなる瞬間を僕は目の当たりにしてたんだ。

店員さんのSHINOさんはあまり話した事無いけど、
クールでシャイで丁寧で、とても素敵な人でした。

俺の折りたたみ自転車には神原さんにもらったLambrettaとBen Shermanの
ステッカーが貼ってある。

いつだって気分はブライトンさ。
曇り空のジミーだよ。
今日はMODSのレコードを。

THE GRAHAM BOND ORGANIZATION 「THERE'S A BOND BETWEEN US」

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FLIPPER'S GUITAR 「ヘッド博士の世界塔」

退屈な世界にトドメを刺して、虚無の頂上でタバコをふかす。

例えるなら、
物語の辻褄がいつしか合っていたことに気付いた時の背筋が凍りつくような感じ。

このレコードには無数の時限爆弾とカラクリが仕掛けられていて、
気付かないなら最後まで縁は無いだろうし、
気付いたらもう脱け出す方法は無いって事。

「葡萄畑で月をたよりに」
「止まるくらいスピードを上げて」
「上を向いた、涙なんてのは、鼻で笑おう」
「人生ってやつは、ウィニープーだらけのマグカップコレクション」
「沈黙の世界で犬は吠えるだろう」

こんなフレーズの数々。
天才だよ!

flippers.JPG


このレコードはジャケットがたまらなくカッコイイなぁ。

ニューヨークって感じするもんね。

同時代のロンドンパンク勢に比べて、キャラも服装も普通で。
でも4人で立ってると絵になるんだよな。

普通の服しか着てないのにすげーお洒落に見えてくる。
実際ホントにしょーもない服しか着てないんだろうけどね。

その感じがバンドっぽいですね。
いいバンドってみんなそうだよ。

大したことしてないのにカッコよく見えちゃうんだ。

TELEVISION 「ADVENTURE」

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無限に続くフィードバックノイズ。

「loveless」ってタイトルには反して、
このアルバムは愛しか感じないなぁ。
深い森の中にいるみたい。
柔らかくて優しい轟音。

このレコードはひとりきりで聴かなきゃダメだ。

あ、そうか、だから「loveless(愛無き世界)」なんだ!
今気付いたわ!

タイトルに関してはレーベルの社長とのやり取りの中で
皮肉をこめて付けたって逸話があるけど、
でも今俺が気付いた事のほうがロマンチックだなぁ。

my bloody valentine「loveless」
愛無き世界。

ひとりきりで聞くのがオススメ。

mybloodyvalentine.JPG


THE STONE ROSES「石と薔薇」

マンチェスターからロンドンへ。
フラフラのダンスで歴史を刻め。

パンクロックの敗北の後、
英国のこのバンドのこのアルバムは握り拳を振り上げるためのものじゃない。

ヘロヘロでフラフラでヨレヨレ。

闘う前のBGMには全く不向き。
でもレイブパーティーでは何万人も人集めたんだよなぁ。
それだけ当時の英国には無力感が漂ってたんだろうか。

今じゃ寝る前に聞くくらいがちょうどいいレコード。

おやすみなさい。

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